TOP > UNITIMES > 光は健康の万能薬(第1回)
UNITIMES ユニタイムス
ユニタイムスは、あかりの専門家集団であるユニティが、あかりに関する様々な情報を独自の切り口で紹介するメディアです。
1.概要
光についての様々な研究の結果、最近になって光が健康に深く関係していることが明らかになってきました。健康という側面から見落とされていた光の環境について詳しく学び、わたしたちの生活習慣や住空間にどう反映できるかを考えましょう。
本コラムは全3回にてお届けいたします。
2.新たな発見!私たちの目が持つ第三の機能
長い間、私たちが持つ「目」の役割は大きく2つと考えられていました。それは、『明暗を識別する』機能と『色を識別する』機能です。しかし、2002年に“ipRGCs”という細胞の働きが明らかになり、目には第三の機能が存在することがわかりました。(Hattarら2002)
その機能とは簡単に言うと『光で体内時計を調整する』機能です。光に含まれる色素が“ipRGCs”を通ることで、脳が周囲の明るさ情報を解析して、「今は朝だ」とか「もう寝る時間だ」といった、体内時計を調整しているそうなのです。当然ながらこれは、私たちの健康や生命活動に影響する事になるので、人類全体にとって見過ごせない事実です。
さて、こう考えると私たち照明業界は、非常に大きな役割を担うことになるのですが、実は業界内で大きく注目され始めたのは、昨年(2020年)になってからのことです。私も、照明のプロとして、この事実を知った以上、速やかに、率先して皆様へお伝えしなければならないと考えました。それで、昨年より、「サーカディアンリズム」というキーワードを使って、皆さまにお伝えするよう取り組みを始めています。良い光環境を整えると、健康になるというわけですから、ぜひとも知っていただきたいと、強く思うわけです。
3.サーカディアンリズムとは ※1
サーカディアンリズムとは、ヒトをはじめとするほとんどの生物が体内で刻む約24時間周期の生体リズムのことです。概日リズムとも言います。サーカディアンリズムは生物に内在する体内時計によって調整されており、私たちの生命活動にとってとても大切な存在です。
具体的には、睡眠と覚醒のサイクルや血圧・体温・ホルモン分泌などがサーカディアンリズムによって変動しています。サーカディアンリズムの乱れは不眠などの睡眠障害に加え、高血圧や糖尿病、心臓血管系疾患など多くの病気を引き起こす原因になることがわかっています。
4.リズムと光の関係について ※2
ラテン語で「サーカ=おおよそ ディアン=1日」という名前が示す通り、サーカディアンリズムは厳密には24時間ぴったりではありません。実は多くの人が24時間よりもやや長いため、このズレを修正しないでいると地球の自転による24時間の明暗の周期からどんどん遅い方にズレてしまいます。このズレを修正し、毎日規則正しいリズムを刻むために重要な役割を担っているのが「日中は明るく、夜には暗く」という自然界における一日の光の変化です。
詳しく説明すると、目から入った光の情報が(最初に触れた“ipRGCs”を経由して)脳内にあるSCNという神経細胞に伝達され、ペースメーカーとなって心臓や肝臓、血管などそれぞれの臓器が持つ体内時計と同調し調整を図ります。
特に、朝の光にはサーカディアンリズムのズレをリセットする効果がありますが、本来暗いはずの夜に光を浴びてしまうと、さらにリズムを遅らせることになってしまうため注意が必要です。体内時計を同調している刺激は他にも食事、運動や睡眠、温度、社会的環境も因子となりますが、その中でも光は最も強いシグナルであり、すなわち光が人間の健康にとても重要な役割を果たしていると言えます。(長崎大 前村浩二)
第1回は「光と健康の関係」について、簡単に記述させていただきました。
次回はその具体例をご紹介したいと思います。
【参考資料】
※1:㈱遠藤照明HP「光育」より (https://www.hikariiku.com/?endo)
※2:㈱遠藤照明HP「光育」を参考に編纂 (https://www.hikariiku.com/?endo)
WRITER
石本 研 代表取締役社長