TOP > UNITIMES > 光は健康の万能薬(第2回)
UNITIMES ユニタイムス
ユニタイムスは、あかりの専門家集団であるユニティが、あかりに関する様々な情報を独自の切り口で紹介するメディアです。
CONTENTS
1.概要
光についての様々な研究の結果、最近になって光が健康に深く関係していることが明らかになってきました。健康という側面から見落とされていた光の環境について詳しく学び、わたしたちの生活習慣や住空間にどう反映できるかを考えましょう。
第1回では「光と健康の関係」について簡単に記述させていただきましたが、第2回ではその具体例をご紹介したいと思います。
2.サーカディアンリズムと光の関係 ※3
サーカディアンリズムと光の関係について、ここでは具体的な事例を基に説明いたします。
2-1.『日中1000ルクス以上で良い睡眠』
睡眠とともに血中濃度のピークを迎えるメラトニンは眠りのホルモンともよばれ、質の良い睡眠を促進します。メラトニンの分泌は夜の暗さだけでなく、日中の明るさにも影響されます。一日で1000ルクス以上の光を浴びた時間が長いほど、メラトニンの分泌も多くなることが報告されています。(大林ら2012)
2-2.『夜はなるべく暗くする』
たとえば就寝直後に4000k相当の100ルクスの光を浴びた場合、メラトニンの分泌が90%近く抑制され、3ルクスの低照度でもメラトニン分泌は10%抑制されることが報告されています。メラトニンは入眠や体内リズムに関わる松果体ホルモンで、抗酸化作用や血管拡張作用など多くの生理作用を有していることから、夜間には比較的低い照度でも健康への影響がある可能性が考えられます。(Zeitzerら2000)
2-3.『実は大切な色温度の変化』 ※4
4000kの光を浴び続けた場合と、朝に4000kの光、日中は5000k、就寝3時間前には1700kを浴びた場合との比較をしました。その結果は後者の方が38%も入眠までの時間が早まりました。これは自然の太陽光に近い色温度変化があった方が、正しくメラトニン分泌され良い睡眠効果を得られやすい、ということを表しています。
2-4.『リズムの乱れで肥満リスク1.9倍』
夜間勤務者には肥満や脂質異常症が多く、心血管疾患のリスクが高いことが報告されています。その要因のひとつに夜間に浴びる光による体内リズムの乱れがあると考えられます。実際、高齢者(528名)の寝室を測定したところ、夜間暴露照度が平均3ルクス以上の群は3ルクス未満の群と比べ、肥満症の割合が1.9倍であったことが報告されています。(大林ら2013)
2-5.『うつ症状発症リスクを低減』
一般の高齢者において、自宅の寝室を夜間暗く保つことによって、うつ病のリスクが低下する可能性が示されています。新規うつ症状発症群(73名)では、非発症群(790名)に比べて入床時間の段階で寝室照度が高く、その後も一晩中寝室照度が高いという関係がありました。平均照度5ルクス以上の群では、平均照度5ルクス未満の群より、新規うつ症状発症リスクが高い(1.89倍)ということが報告されています。(大林ら 2018)
2-6.『認知機能への良い影響』
高齢者の日常生活における光の浴び方が認知機能障害と関連する可能性があります。グループケア施設に入所している高齢者を日中の照度レベルが異なる2群(1000ルクスと300ルクス)に無作為に分け、3.5年後の認知機能とうつ症状を測定したところ、1000ルクス群が300ルクス群に比較して有意に認知機能が保たれており、うつ症状も少なかったという報告があります。(Rienersma-van der Lekら 2008オランダの王立オランダ科学アカデミーのRixt F. Riemersma-van der Lek氏らの報告で、詳細はJAMA誌2008年6月11日号に掲載)
以上のように、サーカディアンリズムと光は切り離せない関係にあります。多くは、照度の問題なので、頑張れば皆さんご自身でもコントロールすることが出来ますが、光の色「色温度」の変化についてはコントロールが難しいとされてきました。
とはいえ、現在照明業界では、色温度を時間帯別に再現するための様々な照明器具の開発がすすんでいます。私たちユニティでも、積極的に取り扱っており、このホームページ冒頭のタイムラプス映像にあるように、弊社事務所に働きやすさ改革の一環として実際に導入しています。
第2回では「光と健康の関係」の具体例をご紹介しました。
次回はその「光の質」のご紹介と「まとめ」をご案内したいと思います。
【参考資料】
※3:㈱遠藤照明「syncaカタログ」を参考に編纂
※4:Dr.Cristian Cajochen ライティングフェア2021オンライン開催記念講演 「体内時計と睡眠に作用する光:視覚だけではない!光と生体メカニズムの関係」より
WRITER
石本 研 代表取締役社長