UNITIMES ユニタイムス
ユニタイムスは、あかりの専門家集団であるユニティが、あかりに関する様々な情報を独自の切り口で紹介するメディアです。
コラム
照明計画を行う前に
弊社には、東京、大阪を中心に、札幌、新潟、名古屋、福岡など、全国に17名のプランナーが在籍しており、年間約4000件の照明計画に携わっています。
弊社が照明計画を行う上での一番の強みは、「自社商品から他社メーカーの照明器具まで、多種多様な選択肢の中からお客様のニーズに合わせたベストな照明プランが提案できる」ということです。
ただし、図面を渡されただけ、お任せで、では照明プランはできません。
今回は私達プランナーが照明計画を行う際に知りたいこと、気をつけていることをお話しさせて頂きます。
野口 伸介 設計部
CONTENTS
1.様々な情報を得る
照明計画を行う上で必要なことは、「様々な情報を得る事」です。この情報は多いにこしたことはありませんが、ただやみくもに集めても見当違いな情報は混乱や勝手な思い込みを生み、イメージとかけ離れた照明空間ができてしまいます。
では、どんな情報を聞き出せば良いかを挙げていきます。
1-1.空間イメージの把握
まずは、業種、立地条件、内装、図面関係などの「建築的条件」、客層、営業時間、店舗のグレードなどの「営業形態」、といった「空間イメージ」の把握です。
これらは直接光には関係ありませんが、器具の選定や配灯に大きく関わってきます。
1-2.照明イメージの把握
次に、明るい、暗い、少し明るさを抑えた、などの「明るさ」、白色系、暖色系といった「光の色」、フラットな光、メリハリのある光、やわらかい光といった「光のイメージ」、シンプルな器具、グレアレス、小型器具などの「器具の意匠」、といった「照明イメージ」の把握です。
「明るさ」については、明るい、暗いの感覚が人それぞれですので共通の認識が必要になります。
「光のイメージ」は非常に抽象的ですが、照明計画のコンセプト、方向性を決める上で一番重要な情報になってきます。
「明るさ」と「光のイメージ」については、「どこどこの店舗のような雰囲気にしたい」、「この写真のような陰影のある照明にしたい」といった実際の店舗名やイメージ写真を共有することが良いでしょう。
1-3.その他留意点の把握
最後にコスト、工事スケジュールなどの「計画条件」、天井の懐、電気容量、施設ごとの設計指針書などの「施工条件」、といった「その他留意点」の把握です。
どんなに素晴らしい提案をしても予算オーバーでVEになったり、逆に予算内に納めることだけに注視するあまり店内が暗くなり、結果増設するというケースも多々あります。
また、ここ最近の照明業界全体での在庫不足により、選定した器具が納期に間に合わない、意図した器具を選定できない、といった問題が多発していますので工事スケジュールの把握も大切になってきます。
2.照明コンセプトを創る
これら全ての情報を通して、照明のコンセプトが生まれてきます。
そして、その照明コンセプトを実現するための照明器具を選定し、照明手法を考え、「ベストな照明プラン」をご提案します。
3.こんなにも違う? 各メーカー照明器具の比較
照明器具のLED化が一般的になり、照明を提案する側として一番大変なことが、それぞれの照明器具の光の色、広がりなど、光の特性を把握することです。
なぜかと言いますと、同じ色温度、配光角の器具でも各社が採用しているLEDの素子、配光制御の方法の違いによって、光の色、広がりが全く異なるからです。
では実際に比較してみましょう。
色温度は3000K、配光角は中角形、明るさは2000 lmクラスの器具で比較してみました。
A社とB社の光はシャープなポイント配光です。逆にD社とE社の光はフレア(漏れ光)が多く、光を拡散します。C社は光のエッジがやわらかく、中心から綺麗なグラデーションで光が拡がります。
19°から21°と2°の幅がありますが、5種類の器具を比べただけでも同じ中角形の光でこれだけ違いが出てきます。
光の色も画像だとわかりづらいかと思いますが、全て異なります。
「ベージュ系」、「緑がかった」、「ピンクがかった」、「オレンジがかった」と様々です。
同じメーカーの器具でもシリーズによって、光の色、配光が異なりますので注意が必要です。
4.最後に
照明計画を行う際は、必要な情報入手とそれらをきちんと整理し、照明計画のコンセプト、方向性を導き出すことが大切です。
また、光の広がり、光の色など、それぞれの器具の特性を理解することで、弊社は様々なメーカーの照明器具を扱える利点から、よりイメージに合った光を提案していきたいと考えています。
WRITER
野口 伸介 設計部